●あらすじ
強大な魔力を持つ、黒うさぎの獣人ミイシャ。 お転婆な彼女の夢は【あたたかい家庭を築く】こと。
師匠に連れられてやってきた王宮で、【理想の旦那様の条件をフルコンプリート】した
トラの獣人ガリオンと出会う。
ミイシャの猛烈アピールに、早速急接近する二人。
しかし、この恋の成就には越えなければならない【大きな壁】があった……!!

「お嫁さんになるために、全力でがんばります!」

【あざとカワイイ黒うさぎとクールな溺愛系イケメントラのモフモフでハッピーな爽快ラブファンタジー!!】
●立ち読み
「んっ」
 耳を触られたミイシャは目をつぶり、小さく声をあげた。
 ガリオンは耳を軽く掴むと根元から先までそっと滑らせた。
 敏感な耳がしごかれるその度に、ゾクゾクするような気持ちよさを覚えて、ミイシャは甘い声を漏らした。
「んっ、ふ、……ガリオンたら、耳を揉むのが……すごく上手だよ」
「俺もやたらに耳を揉んだりはしない」
 黒うさぎに女たらしだと思われたくなかったのか、不機嫌を滲ませてガリオンは言った。
「嘘。あんたはとてもかっこいいトラだから、女の子にモテるでしょ、あああん!」
 口を封じるように耳の付け根をやわやわと揉まれたミイシャは、ぷるぷるしたピンク色の唇を震わせた。
「俺には決まった番つがいはいないからな、そんな節操のないことはしていない」
「そう、なの?」
「ああ、そうだ……本当に手触りのいい耳だな」
 指で挟んで優しく擦られて、ミイシャはもうとろんとした表情で喘ぎ声を漏らしていた。
「お前はまだ繁殖期になったばかりのようだが……俺に耳を揉ませた意味は、わかっているな?」
 ガリオンはそう囁くと長い耳を手に持ち唇を寄せ、その感触を楽しんでから口に含んだ。
「まだ幼いのに……こんなことをされて」
「ああん、やあん!」
 ガリオンが耳を軽く噛みながら囁いたので、ミイシャは身悶えた。
「もう大人だもん、わたし」
 身悶えながら、涙目で主張する黒うさぎ。
「……これからは他の男には揉ませるなよ?」
「うん、わかった。ガリオンにだけだね」
「そうだ、俺にだけだ」
 あまり感情を表さないガリオンだが、ミイシャの返事を聞くと満足そうにうなずき、ほんの少し微笑んで、彼女の口に唇を重ねた。ちゅっと音を立てて口づける。
「俺のうさぎ」
 ミイシャがこくこくとうなずくと、ガリオンは今度はもっと長く唇を押しつける。
「……ミイシャ、俺の耳を揉んでみるか?」
「え? いいの?」
 さすがのミイシャも耳を疑った。初対面の獣人の男が、急所である耳を揉むことを許すとは、それは本気を示しているということなのだ。
「トラの耳は小さいが、ふわふわだぞ?」
 クールなトラは、目元にわずかな笑みを浮かべて言った。
「そら」
 彼はミイシャの手をとると、頭を下げて自分の耳に導いた。ミイシャは、黒髪の間から覗くトラの耳に触れた。
「わあ、ふわふわ」
 彼女は小さな耳を小さな指先で丹念に揉んだ。
「気持ちいいよ。トラの耳も、うさぎに負けずにいい耳だね」
「気に入ったか?」
「うん、すごく気に入ったよ」
「……そうか」
 目元をほんのり赤くしたガリオンは、ミイシャの腰を引き寄せた。そして、彼女の顎に指をかけて仰向かせると、再び口づけた。
「柔らかい……」
 きょとんとした顔のミイシャは、目の前の精悍な顔を見た。
「ねえ、ガリオンっていくつなの?」
「23だ」
「じゃあ、そろそろ番つがいをみつけてもいい時期だね」
「ああ、まわりにせっつかれてる」
「じゃ、じゃあさ、……ねえ、なんで顔を揉むの」
「柔らかい肉だなと思って」
「食べる気なの!?」
 ミイシャはぷんと膨れて、それを見たガリオンがくすりと笑った。
「食べない。そういう意味ではな」
その時、トラの耳がぴくりと動いた。ミイシャも耳をピクピクさせた。
「誰かが呼んでるね」
「ああ。仕事に戻らなくてはならない」
 彼はミイシャを膝から下ろすと、見下ろして言った。
「魔導師の弟子のミイシャ、必ず迎えに行く」
「ガリオン……」
 そして、彼は庭園から去っていった。
「迎えに来るの、待ってるよ」
 黒うさぎは呟いた。


黒いおみみのうさぎなの
葉月クロル 著:椎名咲月 画
3月27日発行予定 1,200円(税抜)

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