●発行記念SS 結婚記念日の贈り物の相談
アルウィンは仕事の関係で王都に居るレオノーラの兄、アルシオールのもとを訪れていた。

「では、これでこの件は終わりだ」
「はい、あの……」

アルシオールは書類を見直してからアルウィンに話かけた。だがアルウィンは浮かない顔をして何か言いたそうだ。
彼には悩んでいることがあった。もう直ぐレオノーラとの結婚記念日が来る。
何を贈るか毎年悩んでいたのだが、思い切ってアルシオールに相談してみることにした。

「何か聞きたいことでもあるのかい?」
「……レオノーラに結婚記念日に何を贈ったら良いのかと思いまして」
「ああ、今年も苦労しているんだね」

アルシオールは眉を上げた。本人に聞いても欲のないレオノーラのことだ、気持ちだけで嬉しいというのだろう。
それでいつもアルウィンが悩んでいると彼の兄カルロが言っていたのを思い出す。
かと言ってアルシオールもどうしたものかと思った。
そこへ戸口から顔を出したのがサバン王子だった。

「おう、二人して神妙な顔をしているな、どうした?」
「サバン、よいところに来た。少し相談に乗ってくれ」

アルシオールは掻い摘んで事情を説明した。

「何だそんなことか、じゃ絹のネグリジェなんかどうだ? 今俺の国では夫が奥方に贈るのが流行っている、それに少し素肌が透けて男心を擽る」

サバン王子は口角を上げて提案をする。

「素肌が透ける……」

アルウィンは小声で呟く。サバン王子は続けて得意気に話を続けた。

「そうだ、レオノーラはあの女らしい身体つきだ。似合うと思うぞ」
「おい、やめろ、僕の妹だ。不謹慎だぞ、でも――、夫だったら楽しみが増えるかもしれないな、アルウィン?」

アルシオールはサバン王子を睨んだ後アルウィンに意味ありげに微笑む。しかし次の瞬間驚く。

「鼻血が出ているぞ、大丈夫か!」

アルウィンは耳まで赤くなって鼻を抑えていた。

「……すいません、ちょっと想像して……」

アルウィンの声はどんどん小さくなっていく。

「あー、暫く仕事でレオと会っていないんだったね、それは……、大変だな」

アルシオールは同情したようにアルウィンの肩を叩く。

「だがレオノーラはスケスケ似合うと思うぞ?」

サバン王子がニヤリと笑い彼を誂う。アルウィンは今度は喉を鳴らした。

「……ちょっと、席を外します」

アルウィンは焦って部屋を出て行く。その姿に男の性を感じてアルシオールとサバン王子は同情をした。


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