●あらすじ
歌手だった前世の経験を活かし、宮廷で働く決心をした貴族令嬢のシーラ。自分の【歌を評価してくれる】パトロンが欲しい! そんな彼女の前に現れたのは、超絶イケメンで頼りになる、【完璧すぎる王子】リシャルドだった!? 「あんな女ったらしで、【平気でキスをしてくる】王子の専属になんてなりたくない!」 【ポジティブで優しい転生歌姫とチャラくて強引な王子様の幸せいっぱいな王宮ラブファンタジー第一弾!!】
●創刊記念SS
眠り姫へ、愛に満ちたイタズラを。 視点:リシャルド

 すぴょぴょと、なんとも可愛らしい寝息が俺の耳に届く。発生源は、俺の膝枕で意識を手放している眠り姫。
 ――まぁ、ベンチでうたた寝中のシーラを見つけたから、勝手に俺の膝に頭を載せちゃったんだけどね。
「いつもは素っ気ないくせに、寝顔はこんなに可愛いんだから」
 何度、俺だけの歌姫になってと口説いたことか。いつも、決まってシーラの答えは〝ノー〟だけれど。
 早く俺だけのものになってくれたら、どんなにいいか。
「……こんな、誰かに恋い焦がれたのは初めてだ」
 もう一度、シーラと名前を呼ぶ。すると、ふにゃりとシーラが嬉しそうに微笑んだ。寝ているくせに、俺の声だけは届いているとか……反則だ。
「まったく」
 寝ているシーラの額に、かがんでひとつ口づける。
「んん……」
 違和感を覚えたらしく、若干シーラの顔がしかめられた。それに思わず吹き出して笑ってしまう。
「寝てるときくらい、素直に受け入れてくれたらいいのに」
 俺は笑って、今度は唇へと触れる。ふにっとした柔らかさを感じて、いつまでも触れ合わせていたいとさえ思う。ちゅっとリップ音をさせるようにして、ついばんでいく。
「……んっ」
 シーラの唇を舌でたどると、甘い吐息がもれる。もう何度も聞いたはずのそれは、しかしいつも俺の胸を高鳴らせる。
 もっと聞きたいと――欲が、止まらなくなるなんて。
 そろりと、シーラの口内に舌を侵入させると、すんなりと受け入れられる。くちゅりと水音がして、ひどく甘い。
「ん、ん……」
「……は、シーラ」
 シーラは寝ているから、名前を呼んでも返事がされることはない。それでも、俺は求めたくてシーラの名前を口にする。
 ――早く目を覚まして、俺だけを見て、その可愛い唇からリシャルドと俺を現すための言葉を紡いで。
「ふ、あ……?」
「……ん。おはよう、シーラ」
 何度目かのキスをしたあと、少し息を切らしながらシーラが目を覚ました。自分の状況がわからないようで、目をパチパチと瞬かせている。
「可愛い、シーラ」
「んっ!」
 くすくす笑いながら、今度は優しく口づける。そうすると、すぐに真っ赤にしてシーラは俺の名前を呼んでくれるんだ。
「リシャルド殿下!!」
 ――ああもう、本当に可愛い。……俺の大切な、歌姫。


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