●あらすじ
帝王学を学び、男勝りで責任感の強い性格に育ったオデット。
結婚についても国政の一環という考えを持っていたせいか、恋愛については未経験のことばかり。
そんな彼女が、王としては素晴らしい才覚をもちながらも、どこかいけ好かない所がある、軍人王レオナルドに嫁ぐことに。
「私は気軽に、愛しているなんて言葉を使いたくないんだ」

愛が理解できない破天荒な王妃と、彼女の愛を求め続ける王のロイヤルラブコメディ第一弾!!
●創刊記念SS
並んで食べよう

 結婚式の前夜、オデットは初めて『王家の晩餐の間』に足を踏み入れた。
  大きなテーブルの端と端に皿やカトラリーがセッティングされている。
  侍女に促され、オデットはレオナルドと遠く離れて向き合って座った、オデットが横になれそうなくらい大きなテーブルで――。
「レオンー、いつもここで、ひとりで食べてるのかー?」
 離れているので、必然的に話し声は大きくなる。
「ひとりで食べるときは仕事をしながらになるから、ここには来ないよ」
「食事は家族みんなでしたほうが楽し……」
 そこまで言いかけて気づいた。レオナルドは家族がいない。
 ちょうど給仕がスープを運んできたところで、オデットは急に立ち上がる。給仕がこぼしそうになっていた。
「席をレオンと横並びにしてくれ!」
 レオナルドが「いいね」と、片方の口角を上げた。
 給仕たちがセッティングし直し、オデットはレオナルドの横に座る。
 早速、スープの中から鶏肉を掬い、口に入れた。柔らかくて美味しい。
 チラッとレオナルドに視線を向けると、彼は何も口にせず、上半身をオデットのほうに向けていた。
「どうした? お腹が空いていないのか」
「美味しそうに食べるなと思って見てただけだ」
「うん。このスープは出汁がよくとれていて、ものすごく美味だ。あとで料理長を褒めたい」
 スープ皿の中はあっという間に空になった。
「これ、あげようか?」
 レオナルドが片眉を上げて自分のスープを指差す。
「は? トリニアの王女を馬鹿にする気か? ひとにめぐんでもらって食べたりはしない」
「めぐむんじゃない。残したら料理長に悪いだろう?」
「残す? それはいけない。料理長に悪いから、私が食してやろう」
 そう言いながらも、オデットはにやけ顔を隠せない。もう少し味わいたかったのだ。
「はい、あーん」
 レオナルドは皿をよこさず、スプーンを差し出してきた。
「冗談はよせ」
 オデットが顔を背けると、給仕と目があう。給仕は驚いた様子で咄嗟に目を伏せた。
 オデットがレオナルドに耳打ちする。
「私を辱める気か? 給仕たちにどんな噂を流されるか」
 レオナルドが「わかった」と、顎をしゃくって人払いをした。
「そんなこと頼んでないぞ!」
 肩を怒らせるオデットを意に介さず、レオナルドは彼女の口にスプーンを差し入れた。
「ん……」
 オデットがごくりと飲み込む。
「美味しい?」
「ああ」
「俺にも味見させて」
 彼はオデットの肩を抱き、今度は口に舌を押し込んだ。
「……ん、んんん!」
「ごちそうさま」

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